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コスタリカの観光業は上昇?下降?

 最近、コスタリカのニュースで「観光業が好調だ」という論調の記事をよく見かけます。ですが、私が知る実態はむしろ逆で、観光関係の仕事に就く人たちから悲鳴の声が聞こえてきます。いったいどういうことか、ちょっと調べてみました。


(写真はイメージです)
(写真はイメージです)

  1. コスタリカの観光産業は絶好調!?

 たとえば、現地英字紙The Tico Times紙では、「米国務省がコスタリカを安全な旅行先として推奨している」という記事を出稿。コスタリカの渡航推奨レベルは最も低い1〜4のうち2と、エルサルバドルの1に比べて高いものの、比較的安定していると記述。別の記事では「3月27日〜4月5日のイースター期間、コスタリカのホテル稼働率は平均75%」という予測を発表。「イースターの予測は、企業が競争力の強化と安定した成長を推進した時期の後、歓迎すべき兆しだ」と述べて、その好調さを印象づけています。


  1. コスタリカの観光産業は絶不調!?

 一方、現地でガイドを務める某氏は、私にこう語っています。「以前と同じ”ドル” ”の支払いで、”コロン”による精算をしなきゃいけない。これがどういうことかわかるか?俺たちの飯代すら出ないってことだ。赤字になるから仕事をキャンセルせざるを得ない。仕事はあるが、儲けにならないんだよ」

 さて、これはいったいどういうことなのでしょうか。


  1. 暴騰する為替

 背景には、急激に進行しているコロン(現地通貨)高/ドル安があります。2022年半ばにドル=680コロンだったのが2025年4月には499コロンまで円高ならぬ「コロン高」が進行。約25%のドル購買力低下 (Tico Times)です。さらに直近3月21日には466コロン台まで下落し、20年ぶりの安値圏 (Tico Times)に達しています。外国人観光客はドルで支払いをするため、現地の人びとや企業にとっては25%も収入や売り上げが減るということを意味します。

 それに対して、次期大統領のラウラ・フェルナンデスは「中央銀行には介入しない」と明言しており、政治主導での為替是正を期待できない(Central America)状況。観光・輸出・自由貿易区の各セクターが「これ以上ドルを下げさせるな」と声を上げているが、グローバルな金融トレンドからの圧力は続いており、底打ちしたかどうかも不透明(TicosLand)という状況です。


  1. 崩壊する観光産業労働市場

 2025年第3四半期だけで、前年比2万2,000人以上の雇用が失われた( Tico Times)というのは、衝撃的な数字です。観光研究センター長のバリー・ロバーツは、「業態を変えろ」という政府の姿勢を「侮辱的で現実離れしている」と批判(Tico Times)しています。実際、私の周囲にも半失業者状態になっているガイドがいます。


  1. 見えてくる現状

 これらをまとめると、

  1. 観光客向けには物価が上がって来客減

  2. 業者はドル収入がコロン換算で目減りしてコスト増

  3. 働く人は給料実質減

という厳しい現状が見えてきます。

 これを、もう少し構造化して分析していきます。


  1. 構造化された問題群

①「人数」と「収益」が別の話

 報道が使う指標は主に「入国者数」です。2025年の航空入国者数は約268万人で前年比+1% (Etu Bonews)。一応増加しています。しかし、同じ期間に観光業全体で約6,000万ドルの収益が失われたといいます(Tico Times)。「客は来ているが儲かっていない」という状況なのですが、「来客数増=好調」と読み替え、「コスタリカの観光業は絶好調」的な論調が出てきてしまっているのです。

②グローバルな文脈との比較が抜けている

 2025年は世界観光業が史上最高記録を更新した年で、WTTCによれば1.5兆ドルの経済効果・GDP比10.3%を達成した( TicosLand)のに、コスタリカはわずか1%しか伸びていません。グアテマラ+10%、メキシコ+6%、ドミニカ+5%と比較すると惨敗に近い数字です (TicosLand)。絶対値で見ると「増加」でも、近隣国際社会の潮流の中では完全に乗り遅れていると言わざるを得ません。

③政府(ICT)と業界団体では見え方が違う

 観光大臣は「航空座席数の減少が原因」という説明で為替問題を矮小化しており、業界団体CANATURや元観光大臣らは「警告信号だ」と強く反論(Tico Times)しています。政府発表ベースの報道は自然と楽観論になりがちです。

④「高級化戦略」という言い訳

 ICT(コスタリカ政府観光局)は、「来客数ではなく一人当たり消費額を上げる戦略にシフトした」と説明(Mordor Intelligence)しています。確かにそういう方向性はあるのですが、業界側は「Pura Vidaブランドだけでは世界の主要リーグで戦えない」と明言しており、高級化戦略は現場の苦境を覆い隠す論法にもなっている(TicosLand)という側面がありそうです。


 要するに、「来客数という一つの指標だけで語る政府・ICTの発表」と「為替・収益・雇用という複合指標で語る現場」の間には大きな乖離が生じており、これが社会的な不安や不満の増大につながらないか、心配です。


  1. 日本は大丈夫か

 また、日本のことも考えてしまいます。ドル安はコスタリカに限ったことではなく、世界的なトレンドです。その中で日本だけは円安ドル高になっているということに、どれだけの人が気づいているでしょうか。これは「ただの円安」ではないのです。米国との直接取引以外の部分では、円安効果がダブルになっていると考えなければならないということです。

 実際、日本とコスタリカで取引をする場合、どうしても間に一度ドルを挟まないと決済が難しい場合が多いため、①円安②コロン高という通貨圧力に加え、③現地の物価高というトリプルパンチを食らいます。そのため、弊所もかなり厳しい運営を迫られています。


 通貨の安定は、直接的にその国の人の生活の安全に関わってくるほど深刻な問題です。コスタリカにしろ日本にしろ、自国通貨の価値に関しては、もっと敏感になってほしいと思います。

 
 
 

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