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なぜ「軍隊をすてた」コスタリカ人たちは自国の軍事的英雄を祀るのか?

 4月11日は、この国唯一といっていい「軍事的英雄」、フアン・サンタマリアの記念日です。軍隊のないコスタリカに軍事的英雄?と聞いて訝しむ人もいるかもしれません。ですが、コスタリカとて建国のその日から軍隊を捨てていたわけではありません。


 1855年、隣国ニカラグアは米国人ウィリアム・ウォーカーによって簒奪されていました。ウォーカーはさらに中米全体を我が物にするため、コスタリカ領に侵攻してきました。グアテマラ・ホンデュラス・エルサルバドールにコスタリカを加えた中米連合軍がそれを

サンタ・ロサ(現在のコスタリカ共和国グアナカステ州)で迎え撃ったのです。


 コスタリカ軍下にあって、19歳にして鼓笛手を務めていた少年こそ、アラフエラ州中心部出身のフアン・サンタマリアでした。彼は夜陰に乗じ、単身敵陣に乗り込むと、松明の火をつけ、味方に敵のありかを伝えたのです。彼は殺されますが、この功績によって中米連合軍はウォーカー軍に勝利したと伝えられています。詳しいエピソードは、英語版ですが、こちらのリンク先の映像に詳しく描かれています。


 彼は、コスタリカを含む中米各国の主権を守った英雄として、後世に名を残しました。故郷アラフエラにつくられたサンホセの玄関口である国際空港にも、彼の名が冠されています。その入り口では、彼の銅像が私たちを迎えてくれます。



 今年で169回目の記念日を迎える現地では、鼓笛隊などがマーチを繰り広げ、皆で主権があるありがたみを祝います。コスタリカがコスタリカであり続けてくれていたからこそ、今の、つまり「軍隊のない、自由で民主主義的なコスタリカ」があります。逆説的に聞こえるかもしれませんが、フアン・サンタマリアという軍事的英雄の活躍と戦争における勝利の故事を祝うことは、「非武装を肯定する国家社会」と一本の線でしっかりと結ばれているのです。


 この理屈に矛盾を感じなくなったら、あなたもコスタリカ哲学の習熟者です。

 
 
 

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